こんにちは。mitsuru..です。
私は54歳、犬好きのギター少年です。(^^)/
趣味は、歌を歌うこと、ギターを弾くこと、映画鑑賞、読書、料理、野球観戦などいろいろと
好きなことが多いのですが、
今回、私の趣味の中から、大好きな落語をご紹介したいと思います。
演目は人情噺の代表作『芝浜』です。
何故、『落語』?『芝浜』?と思われるかもしれませんが、
とっても奥が深くて、面白いだけではなく時代感覚や人情も味わえるのです。
若い方には縁遠く、そして堅苦しいものかもしれません。
でも、新しい趣味を探しておられるなら、一度聴いてみてください。
それでは、しばらくの間お付き合いのほどを・・・
落語『芝浜』に見る人間模様 -夫婦編
最初に・・・
あなたは、『芝浜』という落語をご存じですか?
古典落語の演目の一つで、多くの名人が十八番としました。
私は、このお話が大好きなんです。
古今亭志ん朝師匠の『芝浜』は絶品です。古今東西の日本の芸術作品の最高峰だと思っています。
※十八番(じゅうはちばん,おはこ)・・・もっとも得意な芸や技のこと。
落語とは・・・
まず、落語とはどんなものかというと、
江戸時代の日本で成立し、現在まで伝承されている伝統的な話芸の一種です。
「寄席」と呼ばれる常設館などで噺家と呼ばれる演者が着物姿で座布団に正座をし、
一人で何人もの登場人物を上下で演じ分ける話芸です。
扇子と手拭だけのシンプルな道具を用いて手紙や煙草などの様々な物や、戸を叩く音などを
表現したり、歩いたり食べたりなどの所作を身振り・手振りで実演することで、一つの演目と
呼ばれるネタを披露します。
そして話の最後に「落ち(サゲ)」がつくことを一つの特徴としています。
演じ手の技巧と観客の想像力で物語の世界が広がって行くという庶民にとって身近な演芸として
発展して来ました。
※噺家・・・落語家の古い表現。
上方(=大阪)落語では、桂,笑福亭など、
江戸(=東京)落語では、三遊亭,古今亭,柳家,立川などの屋号が有名
※寄席・・・大阪では「天満天神繁盛亭」、東京では「浅草演芸ホール」など。
※上下・・・目上の人は観客席から向かって左(=下手)に話しかけ、対して目下の人は右側(=上手)に
向かって話をする。
演目『芝浜』について・・・
作者は「近代落語の祖」と称される初代三遊亭円朝(1839-1900)と言われています。
夫婦の愛情を温かく描いた屈指の人情噺として今日まで受け継がれて来ました。
演じた噺家は多く、現在の東京都港区にある芝の海岸が舞台であることからも、江戸~東京の
噺家達によって受け継がれてきた「江戸落語」を代表するお話です。
最後のサゲに至る場面が大晦日ということもあり年の暮れに演じられることも多いです。
『芝浜』を演じた代表的な噺家・・・
三代目桂三木助(1902-1961)、五代目三遊亭円楽(1933-2009)、
五代目古今亭志ん生(1890-1973)、三代目古今亭志ん朝(1938-2001)、
七代目立川談志(1930-2011)、十代目柳家小三治(1939-2021) などの名人たち。
『芝浜』のあらすじ・・・
裏長屋に住む鮮魚の行商人の魚熊と女房。
旦那の魚熊は大の酒好きで、それが講じてしくじりを重ね、商いに出なくなった。
見るに見かねたしっかり者の女房が、旦那を叩き起こすところからこの物語は始まります。
詳細は後程紹介する動画をみていただくとして、私がキャッチコピーをつけるとしたら、
❝女房と旦那 騙し騙され・夢現❞
どうですか?興味がわいてきませんか?
通な落語の楽しみ方・・・
さあ、『芝浜』を聴くぞ!と思い立っても、どの噺家の高座を聴けばいいのか迷うと思います。
なので今回は、名人の中から私の大好きな二人を取り上げたいと思います。
どちらか一方だけでもいいですし、それぞれを聴いてみてその違いを感じとるのも通な楽しみ方。
音楽でいうなら、coverを聴くみたいな。
Youtubeのリンクも載せておきますのであなたもぜひ一緒に楽しんでみてください。
古今亭志ん朝と立川談志
その二人とは、演じ方が対照的なこの方々
- 古今亭志ん朝・・・
名人五代目古今亭志ん生の次男。「江戸落語若手四天王」と呼ばれた。
同世代噺家の中では「東の志ん朝・西の枝雀(=桂枝雀)」と称される。
声の艶、澱み無く流れる展開、サゲに至るまでのスピード感、その美しさは天下一品。
正に天才の中の天才。『井戸の茶碗』『火炎太鼓』『粗忽長屋』も絶品。63歳没。
- 立川談志・・・
「江戸落語若手四天王」の一人。志ん朝を生涯のライバルとする。
落語協会を脱退し、落語立川流を創設して「家元」を名乗る。弟子に志の輔、談春、志らく等。
志ん朝を見事な程美しいものを創り上げる「天才」と称すなら、談志は、いったん完璧に創り上た
ものを壊し、その上でさらに超えるものを創り上げる正に「鬼才」。
『紙入れ』『権助提灯』『紺屋高尾』も絶品。75歳没。
<聴き比べ> mitsuru.の思う古今亭志ん朝と立川談志の違い・・・
私が特に二人の違いを感じる部分は以下の通りです
旦那の「感情の起伏きふく」-騙された時の反応-
- 古今亭志ん朝ver.
とても穏やか。
女房が一つ時(=2時間)を間違えて起こしたことに気付いた時もそれほど怒っていない。
打ち明けられた時も、声を荒げたり暴力を振るったり、激高するまでには至らない。
温かい夫婦関係を描くために敢えて感情の起伏を抑えたのか。
それとも志ん朝自身の品の良さからか。 - 立川談志ver.
激高。
離別するとまで言い切り、女房の独白のさなか暴力をすんでのところでやめる。
立川談春も毎年の暮れに高座にかけるが、旦那の感情を込めるあまり涙と汗まみれになる。
旦那の感情の起伏の激しさから夫婦関係の温かさよりも緊迫感を感じる。
これは談志の破天荒さ故か。
女房の愛情の深さ-打ち明けた時の思い-
- 古今亭志ん朝ver.
所作言動、立ち居振る舞いに女性の美しさとともに、女房としての器の大きさ、愛情の深さ、
人間としての強さが引立ち、同時にかかあ天下かとも取れるほどの関係性も見える。
旦那のサゲのとどめの一言にも負けないキャラクターはただただ愛すべき人。
- 立川談志ver.
旦那を心底愛して偉ぶらない女房として造形するも、ただひたすら騙して申し訳ないと涙し
謝罪する姿が痛々しい。
江戸時代の封建的な夫婦関係を描くのであればこのようになるのが自然なのか。
さらに最後のとどめの一言で、主人公は旦那であるとことが決定付けられてしまう。
『芝浜』時系列
あらすじを私なりに時系列で整理してみました。
「女房」が「旦那」に酒を勧めるのがみそなんですよね.
最後に・・・
いかがでしたか?
夫婦関係の描き方が本当に対照的。
立川流ではあまりにも旦那が強すぎて、主人公が完全に旦那になると思うんです。
「旦那」の最後のサゲの一言は、この物語をごっそりとさらっていくほどの威力があります。
主人公は、やっぱり夫婦二人。
「旦那」にも「サゲ」にも負けない「女房」であってほしいのです。
寒い夜には冷酒より熱燗。
夫婦関係は温かいのに限る。
本日はここまでとさせていただきます。
お後がよろしいようで・・・
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